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発想の技術

2016.04.27

弊社は日々、新規事業へのチャレンジを続けています。

新規事業というと得てして既存の延長線上ととらえられがちですが、弊社はいわゆる「既存強化」という意味での新規事業に取り組みつつ、ゼロベースでの新規事業も積極的に推進しています。

そう、まさに「Customer Surprise = Zero To One」の精神で果断なるチャレンジを遂行しています。

しかしゼロからイチ、というのはそう簡単ではありません。

そこで、弊社はまず発想そのものについて研究を行っています。こうした研究を通じて、発想自体の汎用的な技術やノウハウを抽出し、全社的に展開する事によってゼロベースの新規事業がどんどん生まれやすい環境づくりを試みています。

ただし、研究とはいっても堅苦しいものではなく、まずは面白いアイデアを収集しながらその出所やパターンを把握するところからスタートしています。

当然ながら、各分野において面白いアイデアは存在する訳ですが、既成概念や定説を覆すアイデアが生まれやすい業界はいくつかあります。

ゲーム業界もその一つです。

桝田省治(ますだしょうじ)氏は著名なゲームデザイナーです。

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(※)出典1

「桃太郎伝説」、「メタルマックス」、「天外魔境」、「リンダキューブ」、「俺の屍を超えてゆけ」等、ゲーム史上に燦然と輝く名作を多く生み出しています。

桝田氏の発想の卓抜さを要約すると、二つあると思います。

1)リアリティの追及

2)コンセプト(シナリオ)に忠実なシステム(ゲームシステム)

一例をあげると、「俺の屍をこえてゆけ」というゲームがあります。

本作はジャンルでいえばRPGですが、従来のものとは一線を画した作品です。

シナリオのネタバレを避けるため詳細は割愛しますが、要するに短命の呪いを背負わされた主人公とその一族が子孫を残しながら短命の呪いを解くべく戦いを続けていきます。

面白いのは、この短命の呪いというシナリオにゲームシステムが即しているという点です。

ドラゴンクエスト等に代表される王道RPGは、敵を倒して経験値を獲得しレベルアップを続けながら物語を進めていきます。

しかし「俺の屍をこえてゆけ」には時間の概念が存在し、時が経てば経つほど使用するキャラクターの能力値が下がり、しまいには自然死してしまいます。したがって、本作はいかにより強い子孫を残し、スピード感をもって物語を進めていくかが攻略のキーポイントとなっています。

ここで考えて頂きたいのは、本作のゲームシステムはいわば現実世界のリアリティを取り入れているという点です。

すなわち、

1)人間の時間は有限であり、したがって寿命というものが存在する

2)人間は老化と共に能力が衰えてくる

このリアリティを取り入れる事によって、どんなに思い入れのある強く育てたキャラクターもすぐに居なくなってしまうという前提の下、プレイヤーはゲームを続ける事を余儀なくされます。そこには焦燥感、理不尽さ、有限だからこその深い感情移入など、従来のゲームでは得られない感情が芽生えます。

そんなオリジナリティの高いゲームを生み出してきた桝田氏ですが、発想の転換ともいうべき作品を2007年にリリースされました。

その名も、

001

(※)出典2

本作における発想の卓抜さは、

「既成概念の真逆をいく」

という点です。

ドラゴンクエストのような王道RPGの筋書きはシンプルです。すなわち、弱い主人公が大きな敵を倒すべく旅立ち、仲間を作りながら様々な困難を乗り越え力をつけて最終的にはラスボスといわれる大敵を倒します。

しかし「勇者死す。」はラスボスとのバトルから始まり、その結果主人公である勇者が死んでしまうところから物語はスタートします。

まさに王道(既成概念)とは真逆の展開です。

死んだ勇者は5日間のみ蘇る事を許され、その期間内に様々な問題を解決する―これが本作の大筋です。

しかも、ゲーム内での1日は1時間程度なので、一周せいぜい5時間で終わってしまいます。また更に、日を追うごとに勇者の能力値はどんどん下がっていきます(この点は「俺の屍をこえてゆけ」と似ています)。

そんな限定された条件下で、プレイヤーは周を重ねながら物語の核心に近づいていきます。むしろ、周を重ねない限り物語の核心、あるいは真実に至る事が不可能なシステムとなっています。

限定が多いため、当然ながらプレイヤーはゲームの中で様々な選択を強いられます。そして、プレイヤーの選択によって物語の結末は変化していきます。

本作における発想が非常に興味深いのは、本作が伝えたい事、プレイヤーに訴えたい事は既成概念の真逆をいかないと成立しないという点にあります。言い換えれば、そのストーリーを成立させるために既成概念の真逆をいく事が必要だったという事です。

違った景色を見るためには既成概念から脱却しなければならない場合もあるし、既成概念の真逆をいかなければ見えない景色もある、という事だと思います。

そう考えると、発想の技術として「既成概念の真逆をいく」という考え方は思わぬブレイクスルーをもたらしてくれるかもしれません。

本作をプレイした事はありませんが。

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出典1: http://www.4gamer.net/games/094/G009451/20090626072/ 

出典2: http://www.4gamer.net/games/309/G030945/20150806074/