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マネジメント論-2

2016.05.05

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(※)出典1

面白い記事を見つけました。

http://shuchi.php.co.jp/voice/detail/2887? 

主たるテーマはM&A(合併と買収)ですが、歴史と文明の違いによる経営観の違いについて鋭い言及がされています。

「江戸時代以前より、近江(いまの滋賀県あたり)商人のあいだで「売り手よし、買い手よし、世間よし」という三方よしの商売哲学があった。今風の言葉でいえば、商取引にあたってすべてのステークホルダーが得するのが商売の大原則という考え方であった。

 この考えは江戸時代に入って石田梅岩が心学として体系化し、「先も立ち、我も立つ」という共存共栄の利を共にする精神を日本中の商人に広めたのである。現在でも日本の伝統的な企業で、社是として取引先と従業員との共存共栄を原則としている企業はいくらでもある。

 共存共栄の精神の基には、徹底した人間平等主義がある。日本ではこの世の人びとは皆平等である、と考えるゆえに富を分かち合うという精神が芽生えたのである。」

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(※)出典2

石田梅岩

…「マネジメント論-1」で引用したStakeholder Theory寄りな経営者の格言の根底には、実はこうした史的観が根付いていた事は興味深いですね。

一方で、

これに対して、征服した異民族を殺戮したり、人権のまったくない奴隷として酷使したユーラシアの人びとには、一神教の教えもあり、そもそも人間平等という考えはなかった。有史以来、世界中の文明圏で奴隷制がなかったのはおそらく日本だけではなかろうか。奴隷制があったかなかったかで、その文明の人びとの振る舞いがまったく異なってくるからだ。(以下省略)

奴隷制の伝統に基づく勝者独り勝ちの精神は、アップル、グーグル、IBM、ウォルト・ディズニー等の多国籍企業が、徹底した節税スキームで税金の支払いを少なくし、この結果、積み増した利益を株主と経営者が山分けするという行動の原点となっているのである。」

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(※)出典3

言わずと知れた故スティーブ・ジョブス。奴隷制の伝統に基づく精神の持ち主?

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(※)出典4

「与えることは最高の喜びだ。他人に喜びを運ぶ人は、自分自身の喜びと満足を得る」と言っていた偉大なクリエーターであるウォルト・ディズニー。そんな彼が起こした会社も今や超利己主義的な体質をもった組織に?

今や世界でもトップレベルの成功を収めている企業を「奴隷制の伝統に基づく精神を持つ」と解釈するのはやや強引ではありますが、なるほど、グローバルな市場競争を生き抜き大成功を収めているエクセレント企業が「独り勝ちの精神」を持っているという点については一定の説得力があるのではないでしょうか。

記事はこうした歴史的、文明的な違いを指摘した上で、「長期的経営」と「短期的経営」に話を移します。

「経営者個人の利益を優先するとなると、当然、短期経営志向となる。なぜなら個人が経営者でいられるのはせいぜい数年から10年程度のあいだであり、この間に会社の利益を上げ、個人の手取りを極大化する必要があるからである。

 最近のアメリカの企業による自社株買いも、経営者が設備投資や従業員に対する配分を削ってでも、ROEを高めることにより経営者報酬を増やしたい、という意識の表れといわれている。

 上位1%の富裕層が所得の9割超を獲得しているアメリカの著しい格差社会化の進行は、独り勝ち短期経営の結果でもある。

 これに対して日本企業の長期志向は、百年以上続く長寿企業が日本では1万5000社以上(世界で首位)ある一方で、2位はドイツで1000社以下という統計にも表れている。

 トヨタの水素自動車、東レの炭素繊維、ホンダのアシモロボットやホンダジェット等の世界最先端技術は、これら日本企業のすべてのステークホルダーが30年以上の超長期投資に耐えた結果であり、欧米流短期経営では絶対に開発できない技術である。

 一方、海外企業は超長期投資にすべてのステークホルダーが耐えるということはできず、フォルクスワーゲンの排ガス不正、GMの欠陥車放置、ノバルティスファーマの実験結果改竄等、短期でコストのかからない不正に走ってしまうのである。」

一旦ここで整理をすると、奴隷制の伝統に基づく精神は「短期経営」を推し進め、様々な犠牲の上に成り立つ経営者の個人的な儲けと過剰なコスト削減意識からくる不正を生み出している、という話になります。

その反面、「三方よしの商売哲学」からくる「長期経営」は世界中の誰も追随できない技術を生み出し、長寿企業を多く輩出す要因となっている。

こうみると、「三方よしの商売哲学」=「長期経営」が正しいように思えます。

しかし、話はそこまで単純ではありません。

経営者や株主が自分の利益のみを追求するために短期経営を志向する事はあまりにも厚顔無恥であり無知蒙昧としか言えませんが、短期経営それ自体が必要な局面もあります。

例えば、スタートアップベンチャーや零細企業、あるいは業績が芳しくない中小企業はどうでしょう。

スタートアップベンチャーに限っては中長期的に大きなビジョンを掲げつつもまずは自転車操業で経営の地盤を短期的に整備していく必要があります。

零細企業は急激な外部要因に耐えうる企業体力はないため、常に短期的に安定経営をおこなう手段を模索する必要があるでしょう。

そして業績が芳しくない中小企業はというと…

仮に赤字転落をした場合、大手企業ほどの企業体力はないため、待ったなしのV字回復が求められます。そうすると、必然的に短期志向の経営をせざるを得ない状況になります。

(赤字転落を招いた経営者の無能さはここでは一旦おいておきます(´゚ω゚):;*.’:;( ゚∀゚)(゚∀゚*)ノヽ(*゚∀゚))

少なくとも上記三つに関しては、短期経営は選択肢ではなく必然と考えるべきでしょう。

そして、短期経営を志向する場合、はたしてどこまでステークホルダーの利益を十分考慮する余裕があるのか…。

高名な劇作家であるブレヒトは言いました。

「まず食うこと。それから道徳」

企業とて、自社の足元がぐらついていては理想を掲げる事もそれを追及する事も到底出来ない、という現実があります。

こうした場合、一概に短期経営を否定出来ない難しさがあります。

結局は、会社が置かれている状況そして規模により志向すべき経営観は変わる、という話です。

とはいえ、短期あろうが長期であろうが不正や個人の利益のみを追求する事が許される訳ではありませんがね( ´ー`)

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出典1: http://equity-investment.jp/business/mikata-is-good/

出典2: http://www.ehle.ac.jp/meiseisha/ 

出典3: http://www.afr.com/technology/technology-companies/apple/steve-jobs-wasnt-so-selfish-says-new-book-20150323-1m64gn 

出典4: http://iwachanpapa.blog.fc2.com/blog-entry-402.html